以下に「Web静岡新聞」の”トークバトル”に投稿した全文を載せてみました。 ※下記アドレス参照 http://www.sbs-np.co.jp/talkbattle/ 1999年9月5日 静岡新聞 朝刊 玄倉川キャンプ事故に思う 私は”NATURAL ACTION”というコマーシャルラフトカンパニーでリバーガイドをしている者ですが、川に携わるものとしてまた、”RESCUE-3 SWIFTWATER RESCUE TECHNICIAN”としてあくまでも一つの方法としてこんな団体もあるんだよという意味で投稿させていただきました。 1999年8月14日に発生した「玄倉川キャンプ事故」には”RESCUE 3”でも強い関心を抱いたらしく、本部から事故の検証をするためにレスキュー3ジャパンのスタッフ数名で8月19日に玄倉川の事故現地に行き、今後の活動の参考のために色々な角度から事故の検証をして、レポートをまとめに行った帰り道に富士宮に寄ってくれたので色々な話を聞けました。その時の内容は、大変デリケートな話なので「ノーコメント」とさせていただいて、ここから先はあくまでも私個人の考えをここに書かせていただきます。 私が、もし今回の事故現場に居合わせたと仮定して考えてみると、もちろんその状況に応じたタイミングにもよりますが、いくつかのレスキュープランが思い付きます。たとえそのタイミングがテレビでも放映されていた全員が流された瞬間だったとしても、”スローバック”を用いる等いくつかのバックアッププランが有ったのではないかと考えます。 たしかに聞く人によっては「現場にいなかったくせに、無責任な発言をするな!」とも取られる内容ですが、今回の様な「事故」になってしまった多くの要因の中の一つと言えるのは、川に関して専門的な知識を持った人と、専門的な救助機材が現場のすぐ近くになかったことも不運の一つだと思えます..... 実際に一番身近なことを例にして言うと私が所属している”NATURAL ACTION”では、それがすべて「人命救助」と呼べるかは別にして、去年の8月から今までの1年間で数回の「事故」を未然に防ぎ、数名を「助けて」いるのです。富士川下流域の約8キロ区間をほとんど毎日午前に1回、午後1回ラフトボートで下っていれば、いわゆる川での水難事故パトロールをしてるのと同じ様な効果が有るんだと思います。 例えばこんな事があったんですが、大雨が降っている早朝、あやまって車ごと富士川に転落した男性が、運良く車から脱出できたものの増水した川の中州のテトラポットにしがみついて血を流しながら、もうろうとしていた時に、タイミング良く我々がラフトボートで通りかかり、その男性を助けて陸上まで搬送し、救急車を呼んであげたとか、時には水遊びをしていた子供が流れにのまれ、今にも溺れそうになっているのを助けたとか、たまたまお客さんを駅まで送りに行ったら川の中の流れを分けている岩に張り付いている子供を発見し、急いで近くまで走っていったら友達2人がどうすることも出来ずに、ただおろおろしているのを”スローバック”を使って助けたりと、まさに「事故」を未然に防いでいることが何回もあるのです。 人命救助に関して「プロ」でも何でもないナチュラルアクションのスタッフですら、日常的に行っていることなんです。 つまり、人が亡くなったり大怪我をしたりして、それを助けたりで警察沙汰になれば、いわゆる「事故」とか「人命救助」になるのかもしれませんが、川の身近に”RESCUE 3”に限らず、この様な知識を持った人材がいれば「事故」になる前に防がれている事も多いのも事実です。 また言い換えれば、今回は不幸にも多くの人命が失われてしまったので、大きな「事故」として扱われ、多くの人が興味を持って注目していますが、別に増水した河川に限らず、水辺では日常的に起こっている事だと言えるのです。 これは私の思い上がった考えなのかもしれませんが、玄倉川の「事故」もそういった意味で、もしすぐ近くに”Swiftwater Rescue”に関しての知識を持った人材がいればある意味「事故」にならなかったのでは..........そして、多くの人たちが「自然の中に帰ってきている」現状の中で、先人が体験で学んできた色々な危険を自分たちは知らないんだと気付いてくれたなら、その中の一握りの人達でも良いから、自然の中でのリーダーに成るべく、もう少し知識を深めてくれたら、全体が良い方向に進むでしょうし、それを学ぶ場所はいくらでもあるんです。 もちろん”RESCUE 3”が万能だとは思っていません、それに不幸にも亡くなられた方々や実際に救助に携わった多くの方を批判するつもりもありません、あくまでも私個人の私見であり、一つの方法論としてお読みいただければ幸いです。 本文補足説明 ”NATURAL ACTION”について 静岡県芝川町を拠点に富士川などでコマーシャルラフトを展開中 ※以下のアドレス参照 http://www.naturalaction.co.jp/ ”スローバック”について 救助にもよく使うロープだが、そのままだと要救助者に投げて使うためにはコイリングして、からまないように注意しながら投げる必要があるので熟練を要する。 対して、スローバックとは直径10センチ長さ30センチ程度のバックの中に、長さ15mから25mぐらいの水に浮くロープが収納されており、バックの口から出ているロープの端部を左手に持ち、右手で要救助者に対してバックをアンダースローで投げつけて使用する為、ロープが絡まず真っ直ぐに飛んでいくので、比較的簡単に使用できる道具。 ※写真付きの解説 http://www.naturalaction.co.jp/Throw_Bag.htm ”RESCUE 3”および”Swiftwater Rescue”について 「RESCUE-3 SWIFTWATER RESCUE TECHNICIAN」 インターナショナルな資格であり、”SWIFTWATER=急流”における救助活動訓練を受けた者のみが持つライセンス。有資格者は全世界に約2万人、日本では約5百人ほどの資格者がいる。また、資格者が一番多いアメリカでは、消防における教育マニュアルの中にレスキュー3テクニックが組み込まれ、主に消防士や警察官など救助活動に従事する者が多く所持している。 ※関連記事 http://www.naturalaction.co.jp/rescue3.htm |
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