岐阜県金山町 横谷峡にて
キャニオニング指導者講習会

体験レポート








主催:ジャパンアドベンチャー
後援:スイスアドベンチャー


2002年4月15日〜17日

 

 

 
どもども、ウィリー祐一どえす。
岐阜で開催されたキャニオニング指導者講習会の、体験レポートをまとめてみました。
ナチュラルアクションとしては新たなアクティビティーとして、そしてJpSART的に言えば、渓谷部のレスキュー技術の巾を広げるためにというのが今回の大きな目的となります。
ちなみに、ナチュラルアクション及びJpSART富士川支所から参加したのは

●受講生として
  ウィリー祐一、佐野文洋、佐野信弥の3名です




2002年4月15日(講習初日)
終日机上講習

美並村:ODSSリバーベース

今回キャニオニングインストラクターとして招いたのは、ヨーロッパに本社のあるスイスアドベンチャーに所属し、キャニオニング部門のオペレーションマネージャーを長く務めてきた、サイモン・ターキー(Nz)氏。
キャニオニングがアドベンチャースポーツとして発展してきたのは、ヨーロッパを中心に25年程前かららしいのだが、キャニオニングを商業ベースに乗せて、コマーシャル化したのは15年程前から。
主にラフティングなどのスポーツに飽き足らない冒険心の強い層に人気が出てきている。

渓流渓谷部を人力で降りてくるのがキャニオニングなのだが、大きく分けて2つに大別される

1.ホワイトキャニオニング(各種ギアを用いないが、ホールジャンプなどは有り)
2.ジャイアントキャニオニング(各種ギアを用いて、下降してくる。アブセリングを伴う)

今回の講習内容はジャイアントキャニオニングのガイディングテクニック、特にキャニオニングのツアー特性や、ゲレンデ選定時の諸注意、そしてカスタマーがギアトラブルなどを起こした時のためのレスキューテクニックを、知識の習得と、実トレーニングに分けて行われた。

午前中は主にキャニオニングツアー組立時の注意など、ほんの一部だけ抜粋すれば、
●キャニオニングでは常に水温と低い流水に接しているので、カスタマーのコンデション保持に気を使う
●各種ギア類はシンプルがベスト。トラブルを起こしにくい
●ゲレンデコンディションは目に見える範囲だけではなく、「集水地域」全体に気を配る
●キャニオニングが行われるゲレンデは、急峻な渓谷である事が多いので、多くのエスケープルートを確保しておく必要性

等々...........


そしてヨーロッパ等で実際に行われている、コマーシャルキャニオニングツアーを時系列の流れに沿って、ガイディングテクニックや諸注意等。


続いてギア説明
キャニオニングに適したギアを、適材適所で正しく使う。
紹介されたギアの中で、代表的な物だけ紹介してみましょう。

キャニオニング専用ギア
キャニオニングハーネス

キャニオニング専用に開発されたハーネスなのだが、どこが他のハーネスと違うかと言えば、お尻の部分に補強用のパッチが施されている点。
これが付いている事によって、足の部分のハーネスが障害物などに引っかかりにくくなり、自然のウォータースライダーを滑っても、ウエットスーツのお尻部分の消耗が防げる。
 
キャニオニングバッグ

水を吸わないビニール素材で出来ているのはもちろんの事、キャニオニングロープや各種ギア類を出し入れしやすいような設計で、特にバックの底の部分には無数の排水穴が開いており、滝の途中でバックを開けなければならなくなったとしても水が中に溜まることなく排水される。
バックには強固なベルトループが付いており、このループにロープを繋げて、バックの蓋を取り、流水の中に投じれば、シーアンカーならぬ、リバーアンカーとして使える。



下降機(ブレーキシステム)
ペツル:ピラナ
下降機(ブレーキシステム)

通常のエイトカンに比べ、キャニオニングに適した作りになっており、簡単にロープをヒッチする箇所を増やす事が出来るので、下降スピード、そしてロープ径に適したフリクションをコントロール出来る。
 
レスキュー8
下降機(ブレーキシステム)

通常のエイトカンと違ってループサイドに耳が付いており、この部分を使って簡単に簡易的なロックが行え、サイズも大きいのでフリクションコントロールがしやすく、破壊強度も高い。
 
ペツル:グリグリ
下降・確保機(ブレーキシステム)

下降のためのブレーキシステムと、確保の為のロックシステムが同居しており、下降にも上昇にも、そしてビレーにも使える。



確保機(各種センダー)
 
カラビナと組み合わす事によってセンダーの機能を発揮する。非常に小さく軽いので、緊急用に常にポケットに忍ばせておきたい。
ペツル:タイブロック
ペツル:アッセンション ペツル:ミニトラクション
俗称ユマールだとかハンドセンダーと言われるアブセリングギア。


他のセンダーに比べて耐荷重が高く、ロープを痛めにくい構造なので繰り返し確保と引き上げを行うような動作に適している。
 
ワイルドカントリー:ロープマン
これもカラビナと組み合わせる事によってセンダーの機能を発揮する。
構造的にタイブロックとミニトラクションの中間的な性格。



初日の最後は各種ロープノットの練習と、正しいギアの使い方等で、これらを複合してギアとロープとロープノットを組み合わし、適材適所なシステムの組み方の講習を行いました。





2002年4月16日(講習2日目)
午前:実技講習

美並村:円空

翌2日目は、朝から長良川に面した高さ7m程の崖を使い、実技講習。
午前中はリリースブルアンカーを設置して、斜面に垂らしたロープとブレーキシステムを用いて下降の練習です。
この場所は人工的に作られたコンクリートの壁なので足場もしっかりしており、ここで繰り返し下降の練習をしたあと、午後の自然の渓谷に備えます。

次に下降中にカスタマーが何らかの原因で斜面上でスタックし、それをレスキューするというシチュエーションでの訓練です。
まずはリリースブルアンカーを設置し、斜面上にセカンドロープを垂らす。
 
セカンドロープでレスキューアーが下りるのですが、スタックしているカスタマーのハーネスに、自分のハーネスから延びるカウズテールを繋ぐために、ちょうど良い距離まで降りていきます。
 
まずはレスキューアーが自分のブレーキシステムをロックし、カスタマーにカウズテールを繋げて確保。
 
スタックしてるカスタマー側のメインロープをリバーナイフの波刃でカット!
 
レスキューアーのブレーキシステムには2人分の荷重がかかります。
カスタマーの状況を確認しながら一緒に下降していきます。

もちろん状況によっては、レスキューするためには下降ではなく上昇しなければならない事もあるのですが、その場合は、レスキューアーのメインロープにメカニカルアドバンデージシステムを組み、アンカーポイントまで引き上げます。

午後の講習地へバスで移動中に昼食



2002年4月16日(講習2日目)
午後:実技講習

金山町:横谷峡

ページトップにも使った写真ですが、午後の講習地は郡上八幡から東へ入った、金山町の横谷峡です。

写真の場所は上下2段の滝が連続しており、ウエットアブセイリングのゲレンデとなります。

滝の上部の立木を利用して安定したアンカーを設置し、そこにリーリースブルシステムを組んでメインロープを垂らします。
滝の右岸側を懸垂下降しますが、1段目の高さは約5m、下の方はオーバーハング気味にえぐれているので、最後は滝壺にダイブするような形でジャンプします。
1段目の滝壺を泳ぐようにして2段目の滝の上に立ち、高さ5mほどの滝を、足下を確認しながら降りていきます。
 
続いては高さ20mは余裕である滝を懸垂下降します。
滝の左岸側の立木数本を利用して、安定したアンカーを設置した後、今回もリリースブルシステムを組んでメインロープを垂らします。
ちなみにここで使っているメインロープは、キャニオニング専用のロープで、セミスタティックのフルドライ仕様なので水に浮きます。

さすがにこの高さの滝の上に立つと足がふるえますが、いざハーネスにメインロープをつなげると、不思議と安心します(笑)。

講習も、なかばにさしかかり、このころになるとブレーキシステムのコントロールにも慣れ、参加者全員臆することなく、かなりのスピードで降りてきます。
 
最後はやはり滝壺へジャンプして、ハーネスからメインロープをはずし、泳いで岸へたどり着きます。
実技講習終了後、金山温泉で体を温め、バスでリバーベースへ戻ってからは、本日の机上でのおさらいと、明日の実技講習のための机上講習が夜遅くまで続きました。





2002年4月17日(講習3日目)
午前:実技講習

金山町:横谷峡

3日目は、朝から金山町の横谷渓谷へ移動します。
が、しかし!!なんと前日から降り続いた雨のため、せまい渓谷内にあふれんばかりの濁流が!!
ここでの実技講習をあきらめ、急遽リバーベースへ戻って、室内での実技講習です。
ちなみに行って帰ってくる移動時間だけで午前中は潰れました!(笑)



2002年4月17日(講習3日目)
午後:実技講習

美並村:リバーベース


参考資料映像
場所をベース内に移動。天井の鉄骨にアンカーを取り、アセンディング、ディセンディングの練習。

●アセンディング
  ・ペツルハンドセンダー右用1
  ・カラビナ3
  ・あぶみ2
  ・デジーチェーン1


●ディセンディング
  ・レスキューエイト1
  ・カラビナ1

参考資料映像
下るだけではなくて登る練習もみっちり行います。

実技講習の後は若干のペーパーワークの後、全体での質疑応答ディスカッション。
インストラクターのサイモン氏に、実際のツアー組立に関した、質問が集中、実に中身の濃い3日間でした。





キャニオニング指導者講習会 前半部門 参加者全員集合!

画像にマウスを合わせると.........